事故から約5年程経った段階で、お母さんが当事務所にご相談に来られました。
事情を聞くと、高次脳機能障害として後遺障害等級9級の認定がなされており、現在、示談交渉中だということでした。しかも、保険会社の示談提示額は約733万円を支払うという、私から見たらあまりにも酷い賠償額の提案でした。
お母さんのお話を聞けば、母子家庭で二人のお子さんを育てており、非常に苦労されている様子でした。元気に家を出たお子さんが信号無視した自動車にはねられ、生死の境をさまよい、今後のお子さんの将来の不安もかかえられ、しかも長期間にわたって賠償問題も解決していないということを聞き、怒りがこみ上げてきました。
すぐに私の方で依頼を受け、保険会社と交渉を始めましたが、到底納得できる回答ではありませんでした。また、9級という等級認定にも疑義がありましたので、異議申立を検討しましたが、ある事情から異義申立は有益的ではないと判断し、5級相当の後遺症をおっていると主張して、裁判にふみ切りました。
裁判では、各所に医療照会をかけたり、医師の意見書を提出したりして、5級相当であることや被害者やその家族がいかにご苦労されているかを訴えていきました。
結局、裁判所も当方側の主張をかなり汲んだところで、加害者側が7000万円を支払うという和解で解決しました。
当初の提示額から約10倍近くの金額になったことにお母さんは目を丸くされていらっしゃいましたが、「これで息子の将来が少しは明るくなりました。」と喜んでおられたのが今でも印象に残っております。
|